東北の縄文文化と雑穀のルーツ(Ⅱ)

土着の縄文人に約3千年前から北東アジアから移住し混血した弥生人とさらに東アジアから移住した古墳人によって現代日本人が形成されたと金沢大学・鳥取大学の研究チームによって古代人のDNA解読から日本人の遺伝的特徴がほぼ一致することが判明しました。北海道・北東北の世界文化遺産の登録が進み秋田でも旧石器時代から縄文、弥生、古墳から16世紀後半に渡る遺跡の研究が進み古代人の生活が解明されてきました。

くまさん農場の近くのハケノ下遺跡の発掘調査からも長い時代の生活様式がわかってきました。米代川の左岸の広がる大野台台地は形成年代の異なる多くの段丘によって構成され縄文から平安時代の遺構・遺物が検出され、鎌倉時代の板立柱建物跡や水田跡、畑跡と考えられる畝状遺構、カマドを有する竪穴建物跡や集落跡の溝跡からは炭化米、雑穀が出土し、古代人の生活の痕跡が確認されています。古代人の豊かさを現代に継承したいものです。

東北の縄文文化と雑穀のルーツ(Ⅰ)

1万年続いた縄文時代の人口分布のピークは26万人で東日本が24万人、西日本は2万だと住居や生活遺跡などから推測されています。
ユネスコの世界遺産委員会は、北海道・北東北の縄文遺跡を世界文化遺産に決定しました。
紀元前の遺跡は初めてで、北海道・青森・秋田・岩手に点在する遺跡から縄文人の生活文化がわかってきました。東北地方は狩猟・採集・漁労に恵まれた自然環境から農耕や牧畜、定住が進み人口増になったと思われます。
くまさん自然農園の近くにある縄文時代の伊勢堂岱遺跡の発掘調査では、土器や石器などが発見され、クルミや栃の実や栗の実などの木の実や果物、栽培種としてソバやイネ科の花粉も確認され雑穀種の採集を思わせます。東北3県に広がる縄文時代から弥生時代の遺跡の発掘が進めば日本列島の一大都市東北の生活文化や食文化が実証され、東北の豊かな雑穀のルーツが解明されそうです。

彩り豊かな“雑穀デザート”を楽しむ

雑穀粉の彩り豊かなソースを作って夏バテ回復のデザートはいかがでしょう。
雑穀粉はお菓子づくりで使うゼラチンや生クリーム、ミルクや卵などの特性を併せ持つナチュラルな食材です。
雑穀粉を片手鍋に好みのジュース(オレンジや葡萄ジュース、赤ワイン、牛乳)を入れて溶かしダマにならないよう強火にかけて木ベラでかき混ぜ、クリーム状になったらそのままかき混ぜ、つややかな透明感が出たら塩少々を入れて雑穀の甘さを引き出し、型へ流し込んで冷やします。
赤紫色のタカキビ粉は葡萄ジュースと赤ワインで溶いたブラマンジェ(デザート)に、アワ粉やヒエ粉を使ったババロアなど、雑穀粉の色を楽しみながら食物繊維やミネラル豊富なソースでデザート作りはいかがでしょう。
運動不足の日常に欠かせない健康食としておすすめのデザートです。

今だから雑穀パン作り

コロナ禍でテレワークや在宅勤務が日常になり家で料理を作る時間が増えています。料理家電や部屋の改築などライフスタイルにも変化があるようですが自粛自衛がまだ続く時間、健康な食生活の工夫も必要です。
家庭でのパン焼き器も普及し手軽にパンが焼けるようになり、栄養豊富な雑穀を活用した“雑穀パン”作りをおすすめします。
雑穀入りのパン生地は、炊いた雑穀を混ぜ込む方法と雑穀粉を混ぜて作る方法がありますが、あわ粉を使った生地にドライフルーツを入れた食感を楽しむヘルシーなパンや炊いたひえご飯で焼くパンはモチモチの食感がなんともいえません。
なんといっても雑穀パンは焼きたての香りと素朴な味は新しい味わいです。しっかり噛んで甘みが楽しめる栄養価の高いパンは停滞した日常に活力を取り戻すメニューです。雑穀パンに和風惣菜をサンドしたサンドイッチと楽しみも広がります。

今こそ雑穀の力を活用する時

先進国も後進国もコロナウイルスが蔓延する時代ですが今こそ雑穀の優れた植物栄養素の力を見直すべきです。
まずは雑穀の豊富なポリフェノールの抗酸化力です。病気の元となる“体の鎖”から体を守る働きがあることです。
次に雑穀に含まれるカリウムの働きです。
人の細胞はナトリウムとカリウムのやりとりから大切な情報を身体中に廻すことを助けているからです。
3つ目は必須アミノ酸のバランスを整える働きを促進していることです。体内で作られない8種類の必須アミノ酸は一つでも欠けると機能しないからです。雑穀に含まれるリジンがこの働きを助けるからです。
小さな雑穀がビタミンやミネラルや豊富な食物繊維で免疫力を高めコロナに負けない健康な体を保ってくれることを見直す時代です。
古代人のエビデンスを現代の科学で実証してくれることに感謝です。

初夏に飲む雑穀甘酒は“和風ヨーグルト”

江戸の初夏は天秤棒を担いで冷たい甘酒を売りで賑わったそうです。甘酒は冬のイメージがありますが、夏バテをしない体づくりの健康飲料だったのです。
名前は“甘酒”ですがアルコール分はゼロで麹菌の働きで、でんぷんをブドウ糖に変えた天然甘味飲料です。
腸内環境を整え悪性の菌に感染したりすることを防ぐ現代にもぴったりの保健飲料です。
ヒエやアワ、キビなどの雑穀粥で作る甘酒はカスタードクリームやチョコレート風の栄養価の高い甘酒となります。
酸化を防ぎ若さを保つ抗酸化成分を生成し、アミノ酸バランスに優れビタミンやミネラル、食物繊維も豊富な健康乳酸飲料として和風ヨーグルトともいえる夏の飲み物です。
コロナ禍の拡大する時代、健康維持増進に是非、雑穀甘酒の活用をおすすめします。
江戸の知恵を復活したいものですね。

凶作が証明した雑穀の力

天保の大飢饉(1833年~1837年)は日本だけでなく世界的でも異常気象が多発していました。天保4年(1833年)、秋田では6月に入っても毎日雨が続き夏になっても冷害でセミも蚊も姿を見せないなど、大凶作の様子が記録されています。
不作で亡くなった人の3分の1は餓死で、残りは疫病と山野草の食い合わせが悪く塩分不足で亡くなった人が3分の1ずつだったそうですが、老人や子ども、女性より働き盛りの男性が亡くなるケースが多かったことから栄養不足だったことがわかります。
それを証明したのがマタギの里で餓死者は無く、とちの実やアワ、ヒエの雑穀との混食が栄養バランスを保ったからです。
飽食の時代の今、188年前の凶作の教訓に習って栄養のバランスを考えた食生活を再考し、コロナ禍で誕生した“黙食”などの淋しい食事ではなく、スーパーフード雑穀で元気な食生活を日常にしたいですね。

幻の雑穀「四石稗(しこくびえ)」の力

雑穀のなかでも「シコクビエ」は唯一のアルカリ性で、デンプン消化酵素の働きで飲み込んでもちゃんと消化されるため離乳食としても食されています。
イネ科オヒシバ属で穂が指状になることからフィンガーミレットと呼ばれています。
原産地はアフリカですが日本には縄文晩期にインド、中国を経由し渡来したようです。
カルシウム、ビタミンB1、ミネラル、食物繊維が豊富で栄養価は雑穀の中でも優れたスーパーフードで、インドネシアでは今でも重要な主食となっています。
日本では“四石稗”と呼ばれ、中部、近畿、四国の山間地で栽培され、殻のない四石稗を通して大地のエネルギーを取り込める魅力があり、消化の良さ、栄養価の高いことから子供の栄養食品として研究が進んでいます。
21世紀に入り植物栄養素が注目されるなか、“幻の雑穀”といわれる四石稗の生産が増えるといいですね。

雑穀分化論

雑穀の豊富なビタミン、ミネラル類、ポリフェノールなどの植物栄養素や食物繊維などの機能性が評価され、健康食品として雑穀ブームが広がっています。
雑穀の需要の広がりで90%が輸入品ですが残りの10%の大半が東北で生産されており、“雑穀王国・東北”を自負しています。ブランド化や研究開発も進められています。長い歴史を持つ穀物も“雑穀”で括っていましたが、

  • 主穀―米、麦、トウモロコシ
  • 雑穀―イネ科の作物で主穀より小さな粒のヒエ、アワ、キビなど
  • 擬穀―イネ科の作物の種子に似ているソバ、アマランサス、キノアなど
  • 菽穀―マメ類

と区分しながら雑穀の新しいブランド化を目指して、雑穀の色とりどりの美しさから「彩穀」や栄養豊富な健康食品のイメージから「財穀」など、21世紀の健康フードとして新しいネーミングも付けられています。

理想的な健康食“雑穀ご飯”

漢字で「米」と書くと、語源的には穀物の粒のことを指し(角川新字源)、あわ、きび、ひえもすべてを米と呼びましたが、今は米と雑穀は別物のように呼ばれます。
21世紀に入って雑穀の植物栄養が注目され機能性食品としてスーパーフードと呼ばれています。見直される雑穀とお米を炊き込んだ栄養豊富な“雑穀ご飯”を紹介しましょう。

  • 「もちきびご飯」―ビタミンBが豊富でミネラル分とのバランスが良いご飯です。
  • 「たかきびご飯」―鉄、カルシウム、カリウム、亜鉛などのミネラルが豊富。
  • 「ひえご飯」―マンガン、亜鉛などのマグネシウムの豊富なご飯です。
  • 「黒米ご飯」―アントシアニンが豊富で肝機能回復、血圧の上昇抑制に良いご飯。
  • 「赤米ご飯」―豊富なポリフェノールがコレステロール値や血糖値を下げる。

雑穀をミックスした「二穀・三穀・五穀めし」がこれからの理想的な健康食ですね。