楽しい雑穀のブランド化

あわ、ひえ、きびなどの小粒の穀物にも名前がありますが、まとめて“雑穀”と呼ばれるのもちょっと無念かもしれません。
雑穀たちが栄養学の発展とともに“スーパーフード”と呼ばれるように“雑穀のブランド化”が始まっています。
市場がグローバルになった現代で物の“ブランド化”は大切な戦略となっています。
例えば山形産の西洋梨「ラ・フランス」は、フランスが原産地で本場フランスの名称は発見者の名前「クロード・ブランシュ」ですが今では絶滅して生産されていませんので日本独自のブランドとなっています。ぶどうの王様“巨峰やピオ”が今では“シャインマスカット”が人気ブランドとして流通し品種改良した種が国外に流出するトラブルになっています。今、雑穀でも育成しやすく大粒で美味しい品種への改良が進み、あわでは「ゆきこがね」ひえでは「ひめこがね」などのブランドで人気となっています。

「身土不二」の雑穀食

「身土不二」とは、古くからその土地と一体となって健康に暮らすという信念です。その土地の作物を食べ、その土地の環境になじみともに生きることです。人間の歩く速さは1時間に約4km程で、1日に16kmの四里四方の地域で季節の山野草や地野菜を食べ、四季の気候に適応する力をもらって健康に生きてきたのです。

アフリカ原住民も同様に土地の穀物や芋、豆を中心にした菜食で強靭な体力と健康を保っています。人間に一番近いゴリラは100%菜食ですから、どうやら人間も菜食が自然で当然雑穀が“主食”だったことは間違いありません。アフリカ大陸で120万年前に発掘されたヒトの化石は、臼歯が多く咀しゃく型のあごの動き、でんぷん分解酵素の活性が高い長い腸などの特性から、でんぷんを多く含む穀物と芋を中心とした菜食と推定されています。歩いて採りに行ける雑穀類や野菜で「身土不二」の生活をしていたのですね。

「キビ」は生命の源の食

黍(キビ)は古い雑穀の一つで、中国北部とヨーロッパでは新石器時代の遺跡で出土しています。日本へは米、麦、アワ、ヒエよりもだいぶ遅れて伝来したと考えられています。

キビの名前が文献に登場するのは「万葉集」で、平安時代の「倭名類聚鈔(わみょうるいじゅしょう)」にも載っています。日本の有史以前の古代文献「カタカムナ」では「き」は発生を意味し、「ひ」は生命の根源を表すと書かれています。キビが主食だった時代もあり、おとぎ話「桃太郎」では“きび団子”は力餅として描かれています。キビの語源は実の色の黄実(キミ)がキビになったともいわれています。

キビは日本では伝統的なハレ食の餅や団子に加工されてきましたが現在では、健康食の一翼を担う雑穀となっています。

食べ方もバラエティに富んでいて、好みの野菜と炒め合わせたスクランブルキビやオムレツも作れます。いろいろのトッピングで炊き上げるキビ飯も人気のレシピです。