高機能食材のエース“雑穀”

日本古来の主食であり健康食は、ひえ、あわ、きびなどの雑穀でした。100万人都市、江戸時代も米は年貢として納めるもので、庶民は雑穀が主食でしたから栄養価は高く理想の健康食だったのです。
現在のようにお米が主食となったのは昭和20年頃からで、加えて食の洋風化とともに肥満や食の乱れによる生活習慣病が大きな社会問題となり、食生活の見直しと健康ブームの広がりとともに食卓に再び雑穀が戻ってきました。雑穀の高機能な栄養素が証明され、21世紀は植物栄養素の時代と称されています。
雑穀の栄養価を米と比較しても、「きび」の食物繊維は3倍、「あわ」は7倍、「ひえ」は5倍です。マグネシウムは「きび」4倍、「あわ、ひえ」は5倍。カルシウムは「あわ」3倍、カリウムは「ひえ」3倍、鉄分では「きび」3倍、「あわ」は6倍とどれもが米を凌ぐ高い栄養価が健康食材のエースとして世界的に再注目され広がっています。

東北の「戸(へ)」の付くまちは、馬とヒエの産地です。

青森県、岩手県には「戸(へ)」の付く地名が、一戸(いちのへ)から九戸(くのへ)までありましたが、現在は四戸(しのへ)は縁起が悪いからと変わりました。青森県に5つ、岩手県に3つの「戸」の地名がありますが「戸」の由来は、厩(うまや)の戸という意味で、南部藩は馬の生産地で官営牧場を九つの区画に分けて管理していた名残です。
もう一つの「戸」の由来になったのは、この地区で作られていた雑穀の「ヒエ」が「戸」の語源になったという説です。ヒエの実は人が食べ、脱穀後の殻や茎を馬の飼料にし、堆肥は雑穀畑で活用する“循環式農業”が早くから定着していたそうです。
「ヒエ」は生命力が強く、天明や天保の大冷害による飢饉をこの「ヒエ」で乗り越えています。厩(うまや)の戸、ヒエからの語源からの「戸(へ)」、どちらも循環式農業からの由来として「戸(へ)」の地名があると思うと納得の「戸」に思えます。地図を開いて地名の「戸」を探すのも楽しい時間ですが、どうでしょうか。

雑穀で「五穀豊穣」の国づくり

「五穀豊穣」を支えてきたのはアワ、ヒエ、キビといった雑穀と米、麦などの五穀で古来、私たちの暮らしを支えてきました。
今では食の近代化が進み「五穀豊穣」を支えてきた雑穀たちが急速に姿を消してしまいました。2000年代に入り栄養学が植物栄養素の新しい機能を発見し注目されると同時に生活習慣病の改善を求めて健康志向が高まり、雑穀の栄養機能、効能が注目され始めました。また、岩手県では雑穀遺伝資源センターを設置し、約300種類の雑穀の種を保存しいい種子を絶えず選別し、残し上質のものをそろえれば更に栄養価の高い雑穀たちが作れると新品種の開発にも取り組んでいます。
雑穀は米や小麦と比べ食物繊維も多く、ビタミンB1や鉄分などのミネラルも豊富で、スーパーフードとして再登場となっています。
今一度、雑穀たちの力を借りて「五穀豊穣」の健康経済社会を目指したいものですね。

雑穀の“食物繊維”の驚異的な働き!

21世紀は植物栄養素の時代といわれ、栄養学に新しい波をもたらしその有効性が次々と証明されています。中でもこれまであまり注目されなかった“食物繊維”が栄養調節や微生物の保護、排泄促進などの重要な働きが明らかになってきました。多くの雑穀には、
・少量で満腹になり体のバランスを整える
・腸壁を掃除しながら排泄を促す
・有害成分を取り込み速やかに排泄する
・大腸内を弱酸性に保ち善玉の腸内細菌を育てる
・血糖のコントロールを助ける
・大腸がんや痔を予防する
などの効果が報告されています。
かつての栄養学では、食物繊維は消化できないので食べ物の消化を阻害し、栄養的価値がない邪魔者扱いでしたが、現代の栄養学では大逆転の評価です。雑穀には亜鉛やマグネシウムなどのミネラルを始め必須アミノ酸、ビタミンB群など豊富な植物栄養素が含まれ、スーパーフードと呼ばれているのです。

雑穀は“地球満足度”の担い手

企業は“顧客満足度”を目標に努力します。少子高齢、人口減の街ではこれからのコミュニティの在り方を目指して“地域満足度”を希求します。その上の目標は“地球満足度”の達成だと言われています。
地球温暖化や海洋汚染などの様々な環境問題は、生態系の破壊がもたらした結果です。
21世紀に入って植物の存在が見直されています。植物は光合成により二酸化炭素を酸素に変え、水の循環を支え保ち、太陽光をはじめとする自然界のエネルギーを食べられる栄養分に変えて動物の生命循環を支えています。
中でも雑穀は土壌の環境が悪くても良く育つため、耕地の有用活用と生態系のバランスを崩さない農業を実現しています。体を浄化し豊富な植物栄養素が病気を遠ざけ、体と心を平和にし、地球を平和に導く“地球満足度”を推進する“雑穀たち”が、すべての満足度達成の担い手ではないかと思えてなりません。
雑穀は希望の未来を創ります。

雑穀は“中性”のバランス食

古代中国の哲学に食べ物に体を冷やす“陰性”のものと、体を温める“陽性”のものがあり、陰、陽を見分けて心と体のバランスを保って健康を守るという考え方があります。

陰性の食べ物の代表は植物で、水や砂糖などで体と心をくつろがせ、持久力のある体をつくるといわれています。陽性の食べ物は動物性の食物で、火や自然塩などで活力と抵抗力のある体と陽気で積極的な心をつくるといわれています。食べ物の好き嫌いや過食で体や心のバランスを崩すと病気になります。

雑穀は植物ですが、主食としてたっぷり食べてもどちらにも偏らない“中性”の役割を持っています。

雑穀料理は、弱アルカリ性で陽性の働きもあり、活力のあるバランス状態を整えてくれる作用がわかっています。医聖ヒポクラテスは“食物を医薬とし、医薬は食物としなさい”と言いましたが、雑穀のバランス栄養食が現代でも注目を集める理由がわかります。

古くて新しい雑穀の時代

古くて新しい栄養食“雑穀”が、若い人々に広がっています。その理由は、豊富な栄養素による究極の“健康食”だからです。
栄養面では、あの小さな粒に各種のビタミン類、カルシウムや亜鉛、鉄分などのミネラル類や食物繊維の豊富さに加え抗酸化作用の高いポリフェノールなどの植物栄養たちの働きです。21世紀に入って植物栄養素の医科学的効用が証明されてきました。
食後の血糖値を抑えたり、便秘の改善や骨粗しょう症、糖尿病、内臓脂肪やメタボ予防、改善、疲労回復や食物アレルギーの予防など多岐に渡りその効果がわかってきました。
雑穀を活用したレシピも世界的に健康食材として広がっています。生活習慣病に悩む人々の救世主として雑穀が注目されています。
白米1合に雑穀大さじ1~3杯を加えて炊く“雑穀ご飯”が手軽な健康食としておすすめです。古くて新しい雑穀が健康経済社会への欠かせない主食です。

五穀で健康文化を

日本の総白米食の歴史は50年ほどなのだそうです。それ以前は米に麦やあわ、きび、ひえ、大豆やさつま芋、じゃが芋、大根などを混ぜて炊いた「かて飯」が日常食でした。
奈良時代の「古事記」では五穀は、米、麦、栗、大豆、小豆とあり、江戸時代の「本朝食鑑」では、稲、大麦、小麦、大豆、小豆あるいは麦、きび、米、栗、大豆とあり、これらの五穀によって民が養われていると書かれています。当時は穀類、豆類という分類はなく健康を維持するためベストな組み合わせでした。
人気のあったのは栗やきびで作った餅やだんごで、黄色い仕上がりが喜ばれスイーツ感覚もあり、穀物でカロリーを補い、大豆でたんぱく質、小豆でビタミンや抗酸化成分を補う食材で栄養学的にも理想の健康食だったことがわかります。100万人都市、江戸のバイタリティーを支えていたのは、雑穀食文化です。豊食が飽食や崩食といわれる時代ですが、今こそ雑穀食を見直したいものです。

「雑穀」は21世紀の主食に!

肥満に悩むアメリカが1977年に「合衆国の食事の目標」と題し、5千ページにも及ぶ栄養的指針を公刊しています。通称「マクガバン・レポート」で、国民栄養問題アメリカ上院特別委員会が設置され委員長のジョージ・マクガバンが調査しまとめた指針です。
そのレポートの食事の項には「穀類を主食として豆類、野菜、海草、それに小魚や貝を少量添える、元禄時代以前の日本の食事、和食こそが、人類の理想食である」と書かれています。今から41年前に、米国の肉中心の不健康な食生活が心臓病やガン、脳卒中、糖尿病の原因になっていたと食事の弊害を認めたレポートでもあったのです。
“元禄時代以前”の穀類とはまさに多種多様な“雑穀”が主食だった時代です。食事の洋風化が進み“メタボ”に悩む皮肉な日本ですが、雑穀の広がりは健康社会への救いです。
世界に広がるベジタリアンとともに、雑穀はまた21世紀の主食としたいものです。

雑穀の誤解を晴らす!

お米が日本人の主食になって雑穀は温かいうちは美味しいが、さめるとボロボロ固くなり食べにくいと食卓から遠ざけられていました。古代からヒエやアワが主食で、人々の健康を支えてきたのに、このいわれようです。
主食の王者、お米も近年はその座を“グローバル化”の波で危ない状況です。食は命の源であり“病気は食物で治せ”と言われる健康経済社会の到来で、ビタミンやミネラル、食物繊維や植物栄養素の豊富な雑穀が一気に注目され、多様な広がりを見せています。
小麦、卵、大豆などのタンパク質にアレルギー症状を示す人にとっても、雑穀は貴重な穀物ですし、動脈硬化の予防や血栓防止など脂質代謝の改善に効果があることも確認されています。
“まずい”という誤解で“健康への道”を遠回りしましたが、今ではたくさんの人が雑穀の美味しい食べ方を発信しています。21世紀は雑穀の時代であることは間違いありません。