今こそ雑穀の力を活用する時

先進国も後進国もコロナウイルスが蔓延する時代ですが今こそ雑穀の優れた植物栄養素の力を見直すべきです。
まずは雑穀の豊富なポリフェノールの抗酸化力です。病気の元となる“体の鎖”から体を守る働きがあることです。
次に雑穀に含まれるカリウムの働きです。
人の細胞はナトリウムとカリウムのやりとりから大切な情報を身体中に廻すことを助けているからです。
3つ目は必須アミノ酸のバランスを整える働きを促進していることです。体内で作られない8種類の必須アミノ酸は一つでも欠けると機能しないからです。雑穀に含まれるリジンがこの働きを助けるからです。
小さな雑穀がビタミンやミネラルや豊富な食物繊維で免疫力を高めコロナに負けない健康な体を保ってくれることを見直す時代です。
古代人のエビデンスを現代の科学で実証してくれることに感謝です。

凶作が証明した雑穀の力

天保の大飢饉(1833年~1837年)は日本だけでなく世界的でも異常気象が多発していました。天保4年(1833年)、秋田では6月に入っても毎日雨が続き夏になっても冷害でセミも蚊も姿を見せないなど、大凶作の様子が記録されています。
不作で亡くなった人の3分の1は餓死で、残りは疫病と山野草の食い合わせが悪く塩分不足で亡くなった人が3分の1ずつだったそうですが、老人や子ども、女性より働き盛りの男性が亡くなるケースが多かったことから栄養不足だったことがわかります。
それを証明したのがマタギの里で餓死者は無く、とちの実やアワ、ヒエの雑穀との混食が栄養バランスを保ったからです。
飽食の時代の今、188年前の凶作の教訓に習って栄養のバランスを考えた食生活を再考し、コロナ禍で誕生した“黙食”などの淋しい食事ではなく、スーパーフード雑穀で元気な食生活を日常にしたいですね。

幻の雑穀「四石稗(しこくびえ)」の力

雑穀のなかでも「シコクビエ」は唯一のアルカリ性で、デンプン消化酵素の働きで飲み込んでもちゃんと消化されるため離乳食としても食されています。
イネ科オヒシバ属で穂が指状になることからフィンガーミレットと呼ばれています。
原産地はアフリカですが日本には縄文晩期にインド、中国を経由し渡来したようです。
カルシウム、ビタミンB1、ミネラル、食物繊維が豊富で栄養価は雑穀の中でも優れたスーパーフードで、インドネシアでは今でも重要な主食となっています。
日本では“四石稗”と呼ばれ、中部、近畿、四国の山間地で栽培され、殻のない四石稗を通して大地のエネルギーを取り込める魅力があり、消化の良さ、栄養価の高いことから子供の栄養食品として研究が進んでいます。
21世紀に入り植物栄養素が注目されるなか、“幻の雑穀”といわれる四石稗の生産が増えるといいですね。

雑穀分化論

雑穀の豊富なビタミン、ミネラル類、ポリフェノールなどの植物栄養素や食物繊維などの機能性が評価され、健康食品として雑穀ブームが広がっています。
雑穀の需要の広がりで90%が輸入品ですが残りの10%の大半が東北で生産されており、“雑穀王国・東北”を自負しています。ブランド化や研究開発も進められています。長い歴史を持つ穀物も“雑穀”で括っていましたが、

  • 主穀―米、麦、トウモロコシ
  • 雑穀―イネ科の作物で主穀より小さな粒のヒエ、アワ、キビなど
  • 擬穀―イネ科の作物の種子に似ているソバ、アマランサス、キノアなど
  • 菽穀―マメ類

と区分しながら雑穀の新しいブランド化を目指して、雑穀の色とりどりの美しさから「彩穀」や栄養豊富な健康食品のイメージから「財穀」など、21世紀の健康フードとして新しいネーミングも付けられています。

理想的な健康食“雑穀ご飯”

漢字で「米」と書くと、語源的には穀物の粒のことを指し(角川新字源)、あわ、きび、ひえもすべてを米と呼びましたが、今は米と雑穀は別物のように呼ばれます。
21世紀に入って雑穀の植物栄養が注目され機能性食品としてスーパーフードと呼ばれています。見直される雑穀とお米を炊き込んだ栄養豊富な“雑穀ご飯”を紹介しましょう。

  • 「もちきびご飯」―ビタミンBが豊富でミネラル分とのバランスが良いご飯です。
  • 「たかきびご飯」―鉄、カルシウム、カリウム、亜鉛などのミネラルが豊富。
  • 「ひえご飯」―マンガン、亜鉛などのマグネシウムの豊富なご飯です。
  • 「黒米ご飯」―アントシアニンが豊富で肝機能回復、血圧の上昇抑制に良いご飯。
  • 「赤米ご飯」―豊富なポリフェノールがコレステロール値や血糖値を下げる。

雑穀をミックスした「二穀・三穀・五穀めし」がこれからの理想的な健康食ですね。

楽しい雑穀のブランド化

あわ、ひえ、きびなどの小粒の穀物にも名前がありますが、まとめて“雑穀”と呼ばれるのもちょっと無念かもしれません。
雑穀たちが栄養学の発展とともに“スーパーフード”と呼ばれるように“雑穀のブランド化”が始まっています。
市場がグローバルになった現代で物の“ブランド化”は大切な戦略となっています。
例えば山形産の西洋梨「ラ・フランス」は、フランスが原産地で本場フランスの名称は発見者の名前「クロード・ブランシュ」ですが今では絶滅して生産されていませんので日本独自のブランドとなっています。ぶどうの王様“巨峰やピオ”が今では“シャインマスカット”が人気ブランドとして流通し品種改良した種が国外に流出するトラブルになっています。今、雑穀でも育成しやすく大粒で美味しい品種への改良が進み、あわでは「ゆきこがね」ひえでは「ひめこがね」などのブランドで人気となっています。

雑穀の「色」と「つぶつぶ」の秘密

“小粒で光る”雑穀は機能性食品の頂点として輝いていますが、その秘密は雑穀の「色」の豊富な抗酸化栄養素と小さな「つぶつぶ」の食物繊維の力です。
雑穀の黒、紫、赤、黄、緑などの色は体の錆をおとす抗酸化物質のポリフェノール類で活性酸素を食い止め免疫力を高め生活習慣病予防・改善に大きな働きをしています。
雑穀の小さなつぶつぶの秘密は、一粒一粒を包む皮が食物繊維で、今では第七の栄養素と呼ばれ、栄養調整や微生物の調整、排泄促進などの働きを担っています。ビタミン、ミネラルの豊富な雑穀類は“天然のサプリメント”と呼ばれる理由がよくわかります。
平安時代には生命力あふれる表現として「源氏物語」では“つぶつぶ”という形容詞として使われ豊満で美しさを表現する言葉でした。小さな子供や赤ちゃんが“つぶつぶと肥えて”などと使われていた言葉が雑穀のつぶつぶの力に通じますね。

小さな粒の長い航路に敬意

雑穀の代表、アワ(粟)、ヒエ(稗)、キビ(黍・稷)の字源は、こまかい、小さい、少ないなど“小さな粒”から付けられた名称のようです。中国でもっとも早くから栽培されたキビは、百穀の長、五穀の神とも呼ばれて粒の黄実の色から“キビ”の語源となったともいわれています。
アワは中央〜東部アジアが原産地といわれシチリア、オーストリアを経てヨーロッパへ石器時代に伝わり、日本へは朝鮮を経てもっとも古く渡来し縄文時代にはすでに栽培されています。ヒエと並びわが国最古の作物で、イネ伝来前の主食でした。
キビは中央〜東アジア湿帯地域と推定され、ヨーロッパへは石器時代に伝来し日本へは華北から朝鮮を経て、イネ、ムギ、アワ、ヒエよりも遅く伝来したと考えられています。
石器、縄文、弥生と古代の小さな主食だった作物が21世紀の健康を支えるスーパーフードに蘇る長い道程にロマンスを感じます。

「雑」は“雑”ではない

一つひとつに名前があってもなぜか“一派一絡げ”にして“雑貨や雑誌、雑衣や雑穀”と呼ばれるのは残念な感じがしてしまいます。古代中国の辞書では、“五采相い合うなり、五色の彩りが一つになる”とあります。僧侶の袈裟(雑衣)が色彩によって位を示すように雑他な表現ではないようです。
奈良時代末期に書かられ最古の和歌集「万葉集」は、20巻4,500首以上が、「雑歌」「相聞」「挽歌」の順に編纂されています。
めでたい正月料理のトップには「雑煮」が主役として堂々と登場してきます。どれも、雑な扱いではない気がしますが、僻みでしょうか。
雑穀も“米”が主役ではなく、ヒエ、アワ、キビが主役であったことを考えれば小粒であったことから雑穀と後付けで呼ばれたのではと思ってしまいます。「雑学」も立派な学問ですから僻まなくてもいいのですがちょっと「雑穀じゃない。スーパーフードです!」と呼びたくなります。

「糅飯(かてめし)」「雑炊(ぞうすい)」

江戸の人口が急増し、100万都市なった頃、幕府が食事を二食に厳守するように令を出しています。とはいっても当時の米の収穫量は少なく一日三食の食事形態が一般化するのは幕末のことですから、米の足りない分をムギやヒエ、アワ、キビなどの雑穀やイモ、ダイコンなどの根菜類をおぎなって食べる工夫をしていました。その代表的な食事が「糅飯(かてめし)と雑炊(ぞうすい)」でした。
「糅飯(かてめし)」は、少量の米にムギや雑穀類を混ぜて炊いた食事で、「雑炊(ぞうすい)」は糅飯を汁で薄めた食事で、これが主食だったのです。
こうした食習慣は昭和20年頃まで続いており、人口の70%以上が「糅飯」でしたから現代の栄養学で1977年に「合衆国の食事の目標」とされた「マクガバン・レポート」の理想の健康食だったのです。21世紀に入って雑穀がスーパーフードとして注目され、「糅飯や雑炊」も再登場し“食の先祖返り”として理に適った食生活ではないでしょうか。